コーヒー、カフェカルチャーが日本で浸透すると共に、サードプレイスという言葉も耳にするようになりましたが、この街ではこのお店が「家と仕事場以外の、自分を解放しリラックスできる“第三の場所”」という文脈を作る上で、大きな役割を担ってきたように思います。
「自分が知らない世界を知っている人がいて、そのことに気づいて新しいカルチャーに触れる。そんな機会を生み出す場所にしたいんです」
そう話してくれたのは、宮崎市若草通りにあるActors Square Coffee (アクターズスクエアコーヒー) オーナーの大久保武尊さん。昨年大幅なリニューアルにも踏み切り、空間としてのクオリティ向上を目指す彼に、現状と今後の展望について話を伺いました。
音楽、映画、文学に触れるきっかけを
大久保さんは福岡県の出身。大学進学のため宮崎に移住し、カフェバーでアルバイトをしていたことが、Actors Square Coffeeをオープンするきっかけになったのだそう。大学卒業後は福岡のアンティークショップで働いていましたが、そのカフェバーのオーナーからの店を譲りたいという話を受け、再び宮崎に戻ります。
「アンティーク家具や雑貨などが大好きなのですが、自分がいいと思うものだけを置いた空間を作ってみたい、という思いは以前からあった。尊敬している方からのお話でしたし、いいチャンスだと思ったんです」
現在オープンから6年目。スタッフが友人らと企画した音楽イベントや、街中でイベントを行う人たちの持ち込み企画を共に運営し、人とカルチャーが交錯する場を設け続けている同店。飾り立てすぎず、でも非日常を感じる場でもある、その間にあるちょうどいいバランスを模索し続けているのだそう。
「街の中でこの店がどういう役割をしているのか、という意識はいつもあります。何かをしたいという人に出会ったときに、一緒にやってみようか、と言える受け皿でありたいなとも思う。宮崎でやれること、やれないことはもちろんあるけど、自分たちの街だし、自分たちで楽しくしていこうよ、と考えた方がいいかなって。その役割は店のキャパシティ的にも、うちじゃないとできないことですよね」
思想を真ん中に置いて、街の中で
この人に会いたい、という理由で訪れる店もあるけど、ただふらっと、帰路に着く前に一息つくための店がチェーン店だけでは味気ない。大久保さんはそうも話します。
「ふとした時に、知らないお酒やコーヒー、家具や音楽などのカルチャーに触れるきっかけがあるといいですよね。他県に出ないと文化的なものに触れられる場所がない、という事態は避けたいから、この店を続けているところも大きいです。もちろん売上は大事ですが、お金は手段であって、目的ではないから…僕たちがやっていきたいことって、まちづくりとも違うし、コーヒーショップだけの機能でもないし、わかりづらいかもしれないんだけど。そういう思想の部分を、一番大切にしていきたいんです」
問いかける声に耳を傾ける
自分達が最良だと感じるものを選び続けているけど、これでいいのかな、もしかしたら意味がないことかも?と、常に自問自答しながらの日々。迷いつつも進んで、共感してくれる人が現れたりして、その出会いをきっかけに、じゃあ一緒にやってみましょうよ、と歩を進めていくスタンスは、柔和な印象を持った大久保さんらしいもの。
「自分達と似た感覚を持つ人が増えたらもっと楽しいし、全部自分でやろうと思うと、どこかで限界がくる。私自身、すごく幸せだと思った瞬間に1人だったことがないから、仲間や友人、これから出会う人たちと一緒にやれたら楽しいんじゃないかなと思うんです」
最後に今後のことを聞いてみると、また違うスタイルで場所を作ってみたい、と話してくれました。
「最初にコンセプトがあって、それを叶えるための場所、みたいなお店も作ってみたいですね。いろんなジャンルで、いろんなサイズで。それを自分1人じゃなくて、他の人たちと一緒にやれたら理想的かな。自分では繋がることのできなかった人と関われたり、いろんな文化やアイディアが組み合わさって、可能性が広がっていくと思うから」
文:倉本亜里沙 写真:田部祐徳
DATE
Actors Square Coffee
〒880-0805 宮崎県宮崎市橘通東3丁目6−34 クロノビル 2F
営業時間:平日18:00-24:00 / 土日15:00-24:00
定休日:毎週火曜日、第3月曜日
(詳しくはSNSをご確認ください。)
LINKhttps://www.instagram.com/actorssquarecoffee/