BUSINESS

2022.04.22

「機械化されているのではないかと思うくらい」の師に変えられた人生

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Re:Inkビジネスカテゴリーは、宮崎県内のエネルギッシュなリーダーにお話しを伺います。第1回のゲストは、宮崎県内有数の印刷業、株式会社宮崎南印刷の大迫雅浩代表取締役社長。福岡県出身で、もともと同社とは縁もゆかりもなかったといいます。どういった「転機」があって、今の人生があるのでしょうか。

――早速ですが、社会人になるまでの経歴を教えてください。

(大迫社長)僕は福岡県の生まれで、もともとは宮崎南印刷とは縁もゆかりもないサラリーマン家庭で育ちました。中学2年生の終わりごろ、父の転勤で宮崎に来て、そこから高校を卒業するまでは宮崎で過ごしました。宮崎には父方の祖父母がおり、年に1~2回程度は遊びに来ていましたので、馴染みはありましたね。卒業後は関東の大学を経て、新卒でそのまま関東の大手都市ガス系の情報システム会社に入社しました。

――ここまではまったく「宮崎南印刷」のにおいを感じませんね。

(大迫社長)すべては、妻の実家が宮崎南印刷だったということですね。妻は2人姉妹で、実家に帰るたびに妻の父である大迫三郎現会長(創業社長)から「君を気に入ったので、後を継ぐとか継がないとかは別にして、当社で働いてみないか」というような誘いをいただいていました。断り続けていましたけど(笑)。

前の仕事がすごく充実していて、夢や希望をもって懸命に働いていましたし、都会での生活も楽しかった。ですから、当時は(宮崎に)帰るつもりは全くありませんでした。ただ、何度かお断りした後、妻の実家に泊まる機会があったのですが、そのときはひと言も誘われずに(会長から)「もう心配せんでいいが。何とかするから」と言われてモヤモヤっとした気持ちになりました。東京に戻った直後に「もし将来自分が南印刷に行く気が少しでもあるのなら」と自問自答し、すぐに会長に電話して「やります!」と伝え、32歳のときに宮崎南印刷に入社しました。

転職という判断に至ったのは、デザインや文字文化が好きな方だったということと、会長の熱意と人柄。自分を評価していただき期待してお誘いしていただいたことに対し、「お返ししたい」という気持ちになったからです。

――ということは、人生の転機はやはり会長になりますか。

(大迫社長)そうですね、会長と出会ったことで、人生が大きく変わったと思います。会長は、昔から体力、気力、モチベーションなどあらゆる面ですごい人なんですよ。身体のどこか一部を機械化されているのではないかと思うくらい元気(笑)。

88歳の米寿になられますが、いまだ現役で毎朝営業朝礼にも参加され、そして今も自分のやりたいことを抱いて会社におられます。夢もある。ここまでバイタリティーに溢れた80代は僕の身の回りに一人もいなかったので未だ衝撃を受け続けています。まぁ、そんな方の下で役目を果たすのは、皆さんの想像以上に大変ですけどね(笑)

――プライベートと仕事で、会長のイメージは違いますか。

プライベートでは優しい良いお義父さんですが、期待の表れなのか仕事上ではとても厳しい。出社初日なんかは、会社で少し紹介されて「あそこに席があるからあそこに座っとけ」と言われたきり、ほぼほったらかし状態でした(笑)。

ただ、身内だからといって甘い受け入れをされるのは僕もまっぴらでしたので、一社員として頑張って背中で語れるようになるしかない!という気持ちになりました。

――話を伺っていると、社長自身の決断力・行動力もすごいですね。

(大迫社長)週末も家族にかまう余裕すら無かったくらいに宮崎南印刷の営業マンとして必死になって働いていたころ、たまたま乗った飛行機の機内番組で「義を見てせざるは勇無きなり」という言葉に出会いました。

人生においても、仕事をしていても、其々に自分の立場もあるし、自分のその時の状況もあります。でも自分の役割をしっかり果たしていくには、自分がどんな状況にあっても「義」は果たさなければならないという意味の論語の一文です。

自分が正しいと思うことがあってもそれを行動に移さないのは、勇気がないからだというその言葉を聞いて正直「ハッ」としました。あれもしないといけない、これもしないといけないといつもモヤモヤしながらも、忙しさにかまけていましたし、「このままでは印刷業界は必ず厳しくなる」と会社の未来を支える何かしらの事業をスタートさせなければならないという使命も感じていました。しかし、「忙しい」と自分に言い訳をして行動に移していないことが沢山ありました。

だからこそ純粋に「自分には“勇気”や“覚悟”が足りなかった」と、とても戒めになりましたね。結果、やっていないからできていないのだと考えるようになりましたし、それからは「正しいと思ったら、すぐやる」という風に常に意識しています。

――社長の人生を垣間見た気がします。最後に今後の宮崎に期待することはありますか。

(大迫社長)今は企業ブランディングを求められる時代。メイドイン宮崎、メイドイン自社というものをどれだけつくっていけるかという意味では、全国の中でも宮崎は起業する人たちが多い土地ですから、そういった人材もたくさんいますし、仲間もつくることができる。食材も豊富で環境もいい。だからやろうと思えばメイドイン宮崎はもっともっとやっていけると思います。

実はそんなチャンスや商材は身近なところにいっぱい転がっていて、さきほどの論語の話のように、自分で考え自責で即行動に移せる人が増えると、もっともっと面白い宮崎になるのではないかと思います。

文:小野友貴人 写真:田部祐徳

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大迫雅浩

株式会社宮崎南印刷代表取締役社長。
福岡県二日市(現筑紫野)市出身。中学2年生のころ、父の転勤で宮崎市に移住。檍中-宮崎日大高-日本大学生産工学部卒。1989年にケージー情報システム(現、京葉ガス情報システム)入社。1998年に宮崎南印刷に転職し、営業マンとして活躍。室長、専務、副社長などを経て2015年から現職。地域特化型電子書籍ポータルサイト「miyazaki ebooks」を立ち上げ、同ビジネスモデルを全国28都道府県に展開する一般社団法人ジャパンイーブックス活用研究会の代表理事も兼任する。アウトドア好きで、二十代から始めたリバーツーリングカヤックは趣味の一つ。
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